新人の頃は、目の前の業務を覚えることに精一杯で、周囲の人のやさしさや配慮に気づく余裕がないことも少なくありません。
しかし時間が経ってから振り返ると、「あれも優しさだったんだ」と心に残る出来事がたくさんあることに気づきます。
たとえば、失敗した後にあえて何も言わず、普段通りに接してくれた先輩。
その時は特別な感謝を言葉にできなかったけれど、後になって思えば、それは私を思っての行動でした。
必要なときにはしっかりと指摘し、それ以上は引きずらない。言葉ではなく態度で示されたその姿勢に、安心感と信頼を感じたのです。
介護の現場はチームで動くからこそ、言葉を選ぶ難しさと、言葉にしない配慮の両方が求められます。
相手を励ますつもりの言葉が、状況によってはプレッシャーや負担になることもあります。
だからこそ、あえて言わないことが最大の思いやりになる場面もあるのです。
また、「見守る優しさ」は、一度や二度では気づきにくいものです。
何度も同じような関わりを経験して初めて、「あの人はいつもこうしてくれていた」と理解できることもあります。
それは日常の中で少しずつ積み重なり、やがて大きな信頼へと変わっていきます。
かいご姉妹サロンでは、「あの時の先輩の態度が忘れられない」「こんなさりげない優しさがあった」というエピソードを共有することができます。
文章として改めて読んでみると、当時は見過ごしていた温かな行動や表情に改めて気づくこともあるでしょう。
そして、その気づきが自分自身の行動に変化を与え、次は自分が誰かをそっと支える側になるきっかけにもなります。
言葉にしなくても伝わる優しさは確かに存在します。
大切なのは、それを受け取れる心を持ち続けること。
そして、自分もまた誰かに対して、言葉にしない優しさを届けられる存在でありたいという思いを忘れないことです。