介護の現場では、精一杯やさしく接しているつもりでも、利用者様にその思いがうまく届かないと感じる瞬間があります。
「なんだかそっけない返事だったな」「表情が曇ってしまったな」など、心に引っかかる場面は誰にでもあるでしょう。
そんなときは、まず「やさしさの押し付け」になっていないかを振り返ることが大切です。
相手の状況や気持ちを十分に考えず、自分が思う良いことを先回りしてしまうと、かえって負担になってしまうことがあります。
例えば、体調が優れない利用者様に元気よく話しかけるよりも、静かにそばにいて見守るほうが安心してもらえる場合もあります。
やさしさは「量」や「勢い」ではなく、相手に合った「形」で届けることが重要です。
距離の見直しには、日々の観察と聞く姿勢が欠かせません。
利用者様の表情や声色、しぐさを丁寧に感じ取り、その時々のペースに合わせることで、自然と信頼感が育まれていきます。
かいご姉妹サロンでは、「やさしさがうまく届かなかった経験」や「距離感の工夫」について、介護士同士で意見を交わすことができます。
他の人の失敗談や成功例を知ることで、自分の対応に新しい視点を加えるきっかけになります。
やさしさは、相手に受け取ってもらえて初めて意味を持ちます。
自分の思いを一方的に届けるのではなく、利用者様の心の状態に寄り添いながら、そっと差し出す――その繊細な調整こそが、本当のやさしさなのかもしれません。