介護の現場で意見が食い違ったとき、「譲る」ことと「妥協する」ことは似ているようで違います。妥協は、本来必要だと思っていることを削ることであり、時には利用者の利益を損なう場合もあります。
一方で譲るとは、相手の提案を受け入れつつも、自分の意見を別の形で活かす道を探すことです。
この違いを理解しておくと、話し合いがしやすくなります。
歩み寄るためには、まず「何を守りたいのか」を明確にしておくことが大切です。たとえば、「転倒防止のために必ず見守りたい」という気持ちがあれば、それを軸に相手と相談できます。相手が「自立を促したい」と考えているなら、両方の目的を満たす方法を一緒に探すことが可能です。
こうして目的を軸にすると、対立は「正解探し」ではなく「最善策探し」へと変わります。
また、譲るときには「相手の意見のどこが良いと思ったか」を言葉にすることで、お互いの信頼感が深まります。単に折れるだけでは、後に不満が残りやすく、同じ場面で再び衝突する可能性があります。
逆に、自分の意見を通す場合でも、「なぜ譲れないのか」を感情ではなく理由で説明すれば、相手も納得しやすくなります。
譲ることは負けではなく、より良いケアのための選択です。
こうした経験や工夫を共有できる場所があれば、他の現場の人の知恵も取り入れられ、自分の判断の幅が広がります。