介護の現場では、多様な立場や経験を持つ職員同士が日々連携しています。
その中で、業務の進め方や優先順位、利用者様への対応方法を巡って意見がぶつかることは珍しくありません。
しかし、感情の温度が高いまま議論を続けても、建設的な解決にはなかなかつながりません。むしろ、相手の言葉を正しく受け取れず、溝を深めてしまうこともあります。だからこそ、まずは感情の温度を下げる工夫が大切です。
一つの方法は、物理的に距離を取ることです。
一旦その場を離れて別の業務をこなしたり、深呼吸や軽いストレッチを取り入れたりすることで、気持ちを落ち着けやすくなります。
短時間でもよいので「冷却期間」を置くと、感情の勢いではなく理性を軸に会話ができるようになります。
冷静さを取り戻した状態で話し合うと、相手の発言の背景が見えやすくなります。
たとえば、「急いで処置をしたい」という意見の裏には、利用者様の体調悪化を防ぎたいという強い思いが隠れているかもしれません。逆に「時間をかけたい」という側には、安全面や利用者様の安心感を何より重視している理由がある場合があります。感情が落ち着くことで、こうした根本的な目的を把握しやすくなります。
また、対話の場では「自分の考えが正しい」という前提を一時的に脇に置き、相手の意見を受け止める姿勢を持つことが重要です。
否定から入らず、「そのように考える理由を教えてもらえますか?」と尋ねるだけで、相手は安心して話しやすくなります。この姿勢が、互いに歩み寄るための土台となります。
さらに、感情を落ち着けるための方法や、相手の意図を理解するための工夫は、自分一人で考えるよりも、他の現場で働く人の知恵を参考にする方が幅が広がります。
同じような状況を経験した人の事例やアドバイスを共有できる場、例えば他施設の職員との交流や、介護職向けの意見交換の場を活用することで、より実践的な解決策が見つかりやすくなります。
意見が合わない瞬間は、職場の雰囲気を硬くしやすい場面でもあります。
だからこそ、感情を落ち着け、相手を理解しようとする一歩を踏み出すことが、チームの信頼関係を深め、最終的には利用者様にとって最善のケアにつながります。