介護の現場で意見が食い違う場面は珍しくありません。
ケアの手順や優先順位、利用者様への声かけの仕方など、具体的な「方法」に関して異なる考えが出ることは自然なことです。しかし、多くの場合、その根底にある「目的」は共通しています。
つまり、利用者様の安全を守り、安心して過ごしていただき、生活の質を高めるというゴールです。この事実に立ち戻ることで、意見の溝は思った以上に縮まります。
話し合いの中で感情的になりそうな時こそ、「私たちの最終的な目標は何でしょうか?」と互いに問いかけてみることが有効です。
この一言が、白熱しかけた議論の温度を下げ、冷静な思考に引き戻してくれます。目的を再確認すると、自分の方法に固執するよりも、「利用者様にとってより良い選択肢は何か」という視点に自然と切り替わります。
さらに効果的なのは、職場全体でその共通目的を可視化しておくことです。
掲示板や会議資料に「利用者様の安心を第一に」など短い一文を掲げるだけでも、日常の判断の拠り所となります。特に、経験年数や役職の異なるスタッフ同士でのやり取りでは、この共通認識が衝突を和らげる役割を果たします。
共通目的を意識する習慣は、チームの信頼関係を強化する効果もあります。
たとえ相手の方法が自分と違っても、「同じゴールを目指す仲間」という認識があれば、意見の受け止め方は柔らかくなり、相手の提案を前向きに検討しやすくなります。
また、共通目的の理解を深めるには、他施設や他部署のスタッフと交流し、異なるアプローチを学ぶことも有効です。
同じゴールに向かうためにも、さまざまな手段を知っておくことで、自分の視野が広がり、選択肢が増えます。かいご姉妹サロンのような交流の場では、他職場の実例や工夫を知ることができ、現場での応用もしやすくなります。
意見が合わないときこそ、原点に立ち返る。
「共通の目的」という確かな軸を持つことで、対話は対立から協働へと変わり、利用者様にとってもより良いケアの実現につながります。