【信頼関係を築くために】感謝を“言葉”で届ける意義

介護の現場では、日々さまざまな協力や助け合いが自然に生まれています。

重い荷物を持ってくれた同僚、忙しい時に声をかけてフォローしてくれた先輩、忘れそうになっていた業務をそっと思い出させてくれた後輩…。

こうした行動は小さく見えても、現場を円滑に回すうえで大きな意味を持っています。しかし、その感謝の気持ちを心の中に留めたままでは、相手に届かないまま消えてしまいます。信頼関係を築き、職場の雰囲気をより良くするためには、「ありがとう」という言葉を意識的に口にすることが欠かせません。

言葉にして感謝を伝えることは、相手の存在や行動をきちんと認めることでもあります。

たとえば「助かりました」「〇〇さんのおかげでうまくいきました」「いつもありがとうございます」といった、具体的で状況に沿った表現を添えると、相手は「自分の行動が役に立った」と実感できます。こうした肯定的な経験は、次の行動意欲を高めるきっかけにもなります。


また、感謝を伝えるタイミングはとても重要です。
行動してくれた直後や、その場で気づいた瞬間に言葉をかけることで、感謝の温度がそのまま相手に伝わりやすくなります。後からまとめて伝えるよりも、その場での一言の方が印象に残り、心に響きます。

忙しい業務の中では難しいこともありますが、「今この瞬間」に伝えることを意識するだけでも、職場の空気は変わっていきます。

さらに、感謝の言葉は一方通行ではなく、双方向の信頼を築く効果があります。

自分が感謝を受けた経験は、自然と他の人への感謝行動を生み出し、それが連鎖していきます。この連鎖はチーム全体のモチベーションを高め、結果的に利用者へのケアの質向上にもつながります。


感謝を伝える文化が根づくと、職場内でのコミュニケーションが活発になり、誤解や摩擦が減少します。
小さな感謝の積み重ねが心理的な安全性を高め、「この職場では安心して働ける」という感覚を共有できるようになります。

それは離職防止や新人定着にも影響する、大きな力となります。

感謝は、特別な場面だけでなく、日常の些細なやり取りの中でも表現できます。

たとえば、物を渡してもらった時や、業務を引き継いでもらった時、ちょっとした声かけを受けた時など、その瞬間に一言添えるだけで十分です。これを積み重ねることで、お互いを尊重し合える環境が自然と形成されます。

介護の現場で働く私たちにとって、「ありがとう」という言葉は、単なるマナーではなく、信頼と協力を築くための基本的なスキルです。

そして、それは利用者やご家族との関係にも同じように有効です。言葉での感謝は、心の距離を縮め、関係を温かく保つための大切な橋渡しとなります。