【立場が違うからこそ、見えた景色】同じ言葉でも、響き方は人によって違う

介護の現場では、何気なくかけた言葉であっても、相手の立場や状況によって受け止め方は大きく変わります。

例えば「ゆっくりで大丈夫ですよ」という声かけ。利用者さんにとっては安心や配慮を感じられる優しい言葉になる一方で、同僚や後輩に対しては「作業が遅いと指摘された」と感じさせてしまう場合があります。

このように、同じ表現でも、立場や役割、置かれている状況によって響き方はまったく異なるのです。

こうした「響き方の違い」は、相手の背景や心境を意識しない限り気づきにくいものです。

介護スタッフ同士でも、シフト上の役割や業務の優先度が異なれば、同じ言葉でも意味合いが変わります。現場全体を見ている責任者の発言は、進行や安全を意識したものであっても、現場で動いているスタッフからはプレッシャーや評価として捉えられることもあります。

このズレが積み重なると、意図しない誤解や不信感につながる可能性があります。

だからこそ、言葉を発する側も受け取る側も、「人によって響き方は違う」という前提を持つことが大切です。

もし言葉が思わぬ形で受け取られてしまった場合には、その場で軽く確認したり、後で補足説明をすることで、関係性を保ちやすくなります。「あのときはこういう意図だったんですよ」と一言加えるだけで、不要なわだかまりを防ぐことができます。


また、受け取る側も「もしかすると別の意図があったのかもしれない」と考える柔軟さを持つことで、感情的なすれ違いを減らせます。互いに立場や状況を想像する習慣があれば、同じ言葉でも安心感や信頼感につなげられる可能性が高まります。


立場の違いによる響き方の差は、避けられない現実ですが、それを理解し補い合う姿勢があれば、むしろチームの信頼を深めるきっかけになります。

小さな確認や思いやりの積み重ねが、現場全体の雰囲気をやわらげ、利用者さんにとっても安心できる環境づくりにつながります。