【立場が違うからこそ、見えた景色】安心感の「根拠」は立場ごとに違う

介護の現場で「安心してもらうこと」は多くのスタッフが目指す共通のゴールです。

しかし、その安心感を生み出すために重視するポイントは、職種や役割によって大きく異なります。生活支援を中心とする介護士は、日々の暮らしの中での安全や心地よさを第一に考えます。

一方、看護師は健康状態の安定や症状のコントロールを重視し、リハビリ職は身体機能を維持・向上させることを安心につなげます。さらに事務職や相談員は、制度やサービスの手続きが滞りなく進むことを安心の条件と捉える場合もあります。


このように、同じ「安心」という言葉でも、その背景にある視点や根拠はさまざまです。例えば、介護士が「今日は無理せず休んでもらうことが大事」と考える場面でも、リハビリ職は「少しでも動いてもらうことが将来の安心につながる」と判断することがあります。

両者は真逆に見えても、実はどちらも利用者さんのためを思った選択であり、異なる視点から導き出された結論なのです。


こうした視点の違いを理解せずに話し合いを進めると、「自分の意見が受け入れられない」と感じやすくなります。

しかし、お互いが何を基準に安心と判断しているのかを知れば、目的の方向性を合わせた上で柔軟に対応策を検討できます。

それは不要な衝突を避け、チームとしての一体感を高めるきっかけにもなります。

立場の違いは、安心の定義にも幅を持たせます。

その多様な考え方を知り、尊重し合うことが、より質の高いケアと協力体制の土台になるのではないでしょうか。